2022年7月29日
愛媛県厚生連健診センターの人間ドックを受診したことはありますか???
人間ドックの肺がん検診は、通常胸部X線検査が主流ですが、厚生連では、胸部CTでの検査を行っています。
CT検査は、X線を用いて体を一周しながら、人体を輪切りにしたような断面画像や立体的な画像を得ることができます。
そのため、従来の胸部X線写真と比べ隣接する臓器(心臓や肝臓など)との重なりもなく、分解能(対象を識別する能力)も優れており正確で詳細な診断ができます。
さらに、早い段階でがんを発見できることが国内外の研究でも報告されています。しかし、胸部X線写真より被ばくが多いという欠点があります。
肺がんの現状
現在日本では、二人に一人が、がんになり、がんで死亡する確率は男性で四人に一人、女性では六人に一人といわれています。
肺がんの罹患率は、男性が四位・女性が三位ですが、死亡数は、男女とも一位です。このことから、早期発見し早期に治療する事が大切となります。
肺がんについて
肺は、呼吸により酸素を身体のすみずみまで行きわたらせるという役割を持つ器官です。そのため、身体のあらゆる部分と関連しており、肺で発生したがんが、血液やリンパ液の流れによって、全身に転移しやすいという特徴があります。また、周辺には、重要な臓器も多いため、転移が起こることもあります。
肺がんの中でも腺がんが最も多く、腺がんは喫煙の有無に関わらず発生し、最近では女性ホルモン(エストロゲン)に関与しているという研究発表もされています。
低線量肺がんCT
胸部CT検査の目的は、転移する前の完治可能な時期に肺がんを見つけ、適切な治療をし、肺がんで、死亡しないようにすることです。また、肺以外の病気(縦郭腫瘍や肺気腫、肺炎、乳房腫瘍など)も、見つけることができます。
通常医療機関で精密検査として撮影する胸部CTの被ばくは7.5~10mSvですが、検診では、約1/10の1mSvと低線量で実施しています。
厚生連の被ばくは??
厚生連における胸部CTの被ばく線量は、平均0.74mSvです。2021年4月から12月の平均ですが、体の大きさや筋肉と脂肪の割合で個々の被ばく線量は変動します。これは、日本人が1年間に自然放射線を受ける量(平均2.1mSv)の1/3程度です。
参考までに線量が一定値以上(150mSv)の被ばく後に発生する脱毛、不妊等は、確定的影響といい、健康に対する影響はありません。また発がんや遺伝的影響等は受けた放射線の量に応じて発生します。これを確率的影響といい、100mSv以下の被ばくではほとんど影響がありません。
その他検査における被ばくは次の通りです
胸部X線写真 | 約0.06mSv |
---|---|
年間の自然放射線被ばく | 約2.4mSv |
胃バリウム検査 | 約0.6mSv |
上腹部CT | 約4mSv |
下腹部CT | 約7mSv |
マンモグラフィ | 約0.15mSv |
画像1 胸部CT画像
心臓の裏側にあきらかな病変が認められます。
画像2 胸部X 線画像
平面画像のため死角部分が多い
(心臓の裏、肝臓脾臓の裏、肋骨や鎖骨の裏)
写真は画像1が低線量肺がんCTの画像で、印のついた部位に肺がんが、認められますが、画像2の胸部X線写真では、心臓の裏側に位置する為、病変は認識できません。
低線量肺がんCTは、気になる被ばく線量をおさえつつ、肺がんの早期発見に有効です。
冒頭でも述べたように厚生連人間ドックの肺がん検査はCTで実施しています。
年に一度人間ドックを受診して肺がんのチェックをしてみてはいかがでしょうか?