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おすすめ健厚情報甲状腺について

2022年8月25日

検査部 臨床検査課 越智 紗梨愛

はじめに

皆さんは甲状腺についてどれくらい知っていますか?
近年、甲状腺の病気(甲状腺疾患)が知られるようになってきましたが、そもそも甲状腺についてよく知らないという方が多いのではないでしょうか。そこで、今回は甲状腺について説明していきたいと思います。

甲状腺とは

※1

のどぼとけと鎖骨の間にあり、蝶が羽を広げたような形をした縦4cm、厚さ1cm、重さ15gくらいの小さな臓器です。
海藻類などの食べ物に含まれるヨウ素を材料にして甲状腺ホルモン(FT3・FT4)というホルモンを作り、血液中に分泌しています。

甲状腺ホルモン(FT3・FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の関係性は?

※2

甲状腺ホルモンは、子どもの頃には成長などに関わり、大人になってからは主にからだの新陳代謝の調節をする働きがあります。つまり、活動するために必要なエネルギーを作り快適な生活を送るためになくてはならないホルモンです。

甲状腺ホルモンは、にある下垂体という臓器から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。甲状腺ホルモンが不足してくるとTSHが増加して甲状腺を刺激します。 逆に、甲状腺ホルモンが何らかの理由で増えすぎるとTSHの分泌は抑えられます。

甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても体調が悪くなってしまうため、TSHは血液中の甲状腺ホルモンの少しの変動でも敏感にキャッチして、甲状腺ホルモンの量を一定に保つように指示しています。

甲状腺の検査について

甲状腺の検査には血液検査と超音波検査があります。

血液検査

血液検査では、FT4とTSHの値を測定し、その結果から疑われる疾患について調べます。

<当センターにおけるFT4・TSHの基準値>
FT4(ng/dL) 0.89~1.76
TSH(mIU/L) 0.61~4.23
<血液の検査結果から考えられる甲状腺疾患>
  甲状腺ホルモン(FT4)
甲状腺刺激ホルモン(TSH) 検査結果 高値 低値
高値 TSH産生腫瘍
甲状腺ホルモン不応症
〇甲状腺機能低下症
 慢性甲状腺炎(橋本病)
 先天性甲状腺機能低下症
 甲状腺手術後
低値 〇甲状腺機能亢進症
 バセドウ病
 亜急性甲状腺炎
 無痛性甲状腺炎 
 中毒性結節(プランマー病)
中枢性甲状腺機能低下症

超音波検査(エコー)

※5

甲状腺部分の腫れ方の様子やしこりの形状を観察します。甲状腺に腫れやしこりが疑われた場合、超音波を当てて腫瘍の有無や位置、大きさ、性質(良性か悪性か)を確認します。

甲状腺の病気の種類は?

機能低下症

甲状腺から分泌されるホルモンが不足し、新陳代謝が低下する病気を甲状腺機能低下症といいます。代表的な病気として、慢性甲状腺炎があり、「橋本病」とも呼ばれています。

主な症状・・・無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘

機能亢進症

甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、新陳代謝が過剰になる病気を甲状腺機能亢進症といいます。代表的な病気としてバセドウ病があります。

主な症状・・・脈が速くなる(頻脈)、暑がり、手足の震え、イライラする、体重減少

腫瘍

良性と悪性があり、良性の場合は積極的な治療の必要はありませんが、悪性の場合は大半が甲状腺がんで、手術が必要です。

最後に

日本には「甲状腺疾患」は非常に多く、約200人に1人は治療が必要とされており、特に20~50代の女性に多くみられます。
甲状腺の異常は、血液検査で見つけることができます。一般の健康診断でも甲状腺の血液検査を行う事がありますが、含まれない場合も多いです。少しでも気になる症状や不安がある方はお気軽に当センターの人間ドックや外来を受診してみてください。